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菊芋 キクイモ

アブラナ科  学名:Brassica rapa

仏名:Topinambour, Artichaut de Jérusalem(トピナンブール/アルティショー・ドゥ・ジェルザレム)
英名:Jerusalem Artichoke(ジェルサレム・アーテーチョーク)


【概要】
  • 利用部位:根塊
  • 原産は北アメリカ、ヨーロッパへは、ケベックの地を最初に発見(当時のフランス人の勝手な解釈の“発見”で、既に原住民は居たようですが)したと言われるフランス人探検家サミュエル・シャンプラン(後にサミュエル・ドゥ・シャンプランに改名)によって持ち帰られたのが始まりで、当時(1600年代前半)では大人気を博したそうです。 しかし、間もなくしてやはり同じように探検家コロンブスによって持ち込まれたジャガ芋がパルマンティエ氏(歴史に残る“ジャガ芋普及”に大貢献したフランス人)によって広められ、その人気が取って代わられてしまいました。
    後に再び大量に消費されるようになったのは、日本と同じ第二次大戦中。 荒れた土地でも育ちが良く、収穫も多いので当時は貴重な食料だったのだそうです。


  • 今再び、日本では一種の「健康食品」として、フランスでは「見直すべき食品」として、かつての知名度を回復しつつあります。 戦争を知らない世代には新しい食べ物という感覚ですね。 私も、野草好きな子供時代に名前と食用になる事は知っていましたが、折角綺麗に咲いている花を掘り起こすのがしのびなくて、当時は食べたことはありませんでした。

  • その昔フランスでは、食物としてのジャガ芋が普及する前に一種のブームになったため、現在のジャガ芋と同じ名「Pomme de terre:ポム・ドゥ・テール(大地のリンゴの意)」と呼ばれ、次いで「Poire de terre:ポワール・ドゥ・テール(大地の梨←洋梨です)」と表現した人も居たそうです。 何故梨なのか? 実は販売する際、下膨れのこの芋から飛び出しているヒゲ根をまとめてつる下げていたことから、その形を洋梨に見立てたのだろう とは現代の分析。
    そしていつしか現在のトピナンブールに落ち着いたのも、実は奇妙なものなのです。 元になった単語は「tupinambas」、南米の原住民を示すインディアンの言葉なのだとか。 北米から来たのに、一体何故そんな名が付いたのやら?

  • 前置きが長くなりましたが、この芋であって実は芋ではない食べ物には語るべき事柄がとても多いようです。
    聞いた話ですが、ちょっと前に日本でささやかなブームになっていたのだとか? それもその筈、多くの人を悩ませるカロリーと糖尿病が引き合いに出されるからです。
    芋であって芋でないと書きましたが、実際、ジャガ芋、さつまいも、里芋などと異なり、糖質を含むもののエネルギーに変わらない糖を含むちょっと変わったお野菜だからです。
    味わいに関してはお料理への利用の欄に書きます。

  • 日本にはアメリカから飼料用にと持ち込まれ、地質を殆ど選ばず逞しい繁殖力なため、今もお庭や野原、畑の脇などに元気に育っています。 こちらでも希に野原に、大抵は畑やお庭の角(でもどんどん増えてスペースを広げて行きます)などにまとまって生えているのを見かけます。
【味】
  • フランスの別名、また英語名が示す通り、アーティーチョークによく似ています。 しかし一体何処からエルサレムの名がついたのかは不明。
    アーティーチョークの味をご存知無い方にはどう説明したら良いのやら・・・ 風変わりな甘味がのどの奥に残る珍しい味わいです。
  • 楊枝がスッと入る程茹でても、シャキシャキとした歯ごたえが残っている場合もあります。
    茎のように細く伸びている部分は繊維質が多く(特に皮近く)、硬いので、丸っこいものを選んだ方が良いです。


【栽培・採集時期】
  • 写真の通り、草丈がかなり高くなり、大きい物は2メーターを超す程にもなります。
  • 植えるのは種ではなくお芋。 元々荒れた土地でも逞しく育っていたので、日本の土地なら菊芋にとっては万々歳でしょう。
    春、10cm程土を掘り起こして芋を6〜70cm程の間隔を置いてならべ、土をかぶせておきます。 あまり湿り気がありすぎるのは良くないらしく、この辺りでは半ば渇き気味な砂質の土壌でも全く問題なく育っています。
    くれぐれも植えすぎにはご注意を! 1個の芋から複数の芽が出て、1個しか蒔かなくても収穫は2キロ近くにも及ぶ事があるそうです。

    • 夏に、花びらの長い小さなヒマワリのような鮮やかなイエローの、直径10cm程の花を草のてっぺん及び枝分かれした先に付けます。(右の写真は8月末、ロワール川沿いの民家脇にて撮影)
      収穫は紅葉が深まる10月半ば辺りから。 花が完全に終わって草が枯れ始める頃、又は気温がヒュンと下がって16〜7度辺りになった頃から掘り起こしても良いそうです。
      下の保存の欄もご参照下さい。
    • お花を楽しむために植える場合でも、掘り起こして余計な芋を取り除いてあげないと、土中に残った芋が 翌年それぞれ芽を出して、とんでもなく増えて庭を侵略するので気を付けましょう。

    【保存】
    • 一旦掘り出した芋(根塊)は、長期保存出来ません。
      洗わず泥又は土が付いたまま、新聞紙にくるむかビニール袋に入れて冷蔵庫で4〜5日程。
    • 自宅又は家庭菜園などで栽培し大量に採れるものの消費できず困る場合は、そのまま放っておき、必用な時に欲しい分だけ掘り起こして調理します。
      土中に残しておけば、芽が出る前までは食べられるようで、この辺り(フランス中部、トゥーレーヌ地方)では10月末頃から3月、時には4月頃にもマルシェに売りに来る人が居ます。
    • 一旦掘り起こした物は早々に消費するか、たまり漬け、粕漬け(ぬか漬けはどうなのかしら?)といった漬物の形で保存できるようです。 知らなかったのですが、日本の友人に話したところ、地域興しの一環なのかそうしたお漬物を売り出している所もあるそうです。 そういうわけで、私はお漬物の味の方は知りません。


    【お料理への利用】
    • このサイトにレシピは用意していませんが(そのうちできるかも)、我が家では洗って皮ごと茹でて、皮を除いて冷ましてから輪切り又は角切りにしてヴィネグレット(ドレッシング:マスタード、酢、オリーヴ油などの植物油、塩又は醤油)で和えて食べる事が多いです。
      アーティーチョークの味が好きな方なら、きっと虜になりますよ。 味がそっくり、加えて茹で汁の色や、芋自体の変色加減までそっくり。
    • ポタージュ:ケベックでは他のお野菜と共に煮込んでミキサーにかけ、クリーム又はミルクを加えたポタージュに
    • ソテー:イギリスでは皮をむいて丸のまま茹でて、バターソテーして柔らかく煮込む
    • フランスでは茹でて裏ごししてたっぷりのバターを加えてピュレ(お野菜のペースト)にするのだとか。
    • 茹でないでスライスし、キンピラ風に炒めても良いです。
    • 和風の煮込みはやってみた事がありませんが、案外合うのかも・・・?
    • 生でも食べられるそうで、誰だったかフランスの有名シェフによると皮にっも風味があるので、皮を剥かずしっかりとこすり洗いしてスライスしてアントレにしても美味しいのだとか。 私は生では風味に欠けると思うのですが。 ただ、その際はレモンなど酸味のあるものをまんべんなくかけておかないとすぐに黒ずんでしまうので気を付けて。
      ちょっぴり味がボケ気味なので、洋風料理の場合はマスタードやハーブでアクセントを効かせた方が美味しいと思います。
    【薬効など】
    • 菊芋に含まれる糖質は体に吸収されにくいため、結果的にカロリーが低く、糖尿病の人にとりわけ推奨される食品なのだそうです。
      タンパク質と脂質に乏しく(これも低カロリーの理由)、食物繊維が多く便秘がちな人にもおすすめ。  更にその食物繊維の働きを高めてくれるイヌリンなる成分も沢山含むため、効果が高いそうですよ。 (私は日頃からそうした問題が無いので、身をもって感じた事ではないのですが)
      野菜の中でも飛び抜けてミネラル分(マグネシウム、カリウム)に富んでいます。 その辺りもアーティーチョークに似ていますね。
      ヴィタミンBも多い野菜です。
    • 注意:胃腸の弱い人には良くないらしいです。 また、いくら良い成分を含むとはいえ体に働きかけるという点ではお薬のようなものです。 減量を望んだり体質改善、病状を軽くするため等々、いかなる理由であってもむやみな大量消費など偏った食べ方は避けましょう。
      「健康も美しさも、バランス良い食事が大切」である事を忘れないで!

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