マダムTOMATOの“グルメ・ガーデン”
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365のチーズ


Beaufort ボーフォール

  
AOC:1968年4月4日
熟成ハードタイプ
熟成期間:5ヶ月〜
側面がくぼんだ大きなシリンダー型
重量:約20〜70kg
サイズ:直径35〜75cm、高さ15cm
主生産地:サヴォワ地方
MG:48%〜

チーズと同じ産地サヴォワ地方の赤
又は白ワイン、特にフルーティーなもの

牛生全乳を原料とする大型ハードタイプのチーズ。 生地は加熱圧縮されており、よく締まっています。
サヴォワ地方の厳しい気候の、ボーフォルタン、タランテーズ、モリエンヌ、ヴァル・ダルリーの一部が、AOC認定のボーフォールの山地。

歴史をちょっとだけ
“ボーフォール”という名が世に現れたのは実はとても最近、19世紀半ば(1865年)のこと。 しかしよく似たチーズは紀元3世紀には既に存在しており、中世に製造が発展し、そのボーフォールの元となったチーズが既に有名である事を示す13世紀の書物が残っているそうです。 つまり、ボーフォールという名で知られるようになってからはまだほんの1世紀半ですが、チーズ自体は深い歴史を持っているという事ですね。

製法:原料ミルクはタリーヌ種又はアボンダンス種の牛から得られるものの生全乳。 搾乳後早々に、昔ながらの製法で作られる子牛の内蔵を加工して作られる凝乳酵素を加えて凝乳にします。
これを細かい粒に砕き、加熱・撹拌、次いで麻布に包み、木製の丸い枠からなる型に詰められます。
ずん胴の器状の型に詰めるのではなく、丈のやや低い丸い木枠に、布で包んだ凝乳を詰め込むため、長い熟成後に出来上がるボーフォールチーズの側面が内側にくぼんでいるというわけです。
およそ20時間型にはめ込んだチーズに圧をかけて水切りした後、塩水に浸してから熟成に移ります。

熟成は5〜12ヶ月、この間チーズの表面は、塩水でこすられます。

暗いベージュと淡い焦げ茶、白いシミのような色が入り交じった色の表皮は厚くしっかりとしていてすべらか。 この厚さは熟成期間が長くなればなるほど厚みが増し、部分的に3ミリ程にもなる場合があります。
生地はアイヴォリーから淡く渋めのイエロー、きめ細かくよく締まり、やや弾力があり、切り口にレニュール(lainures)と呼ばれる水平の細い亀裂がいくつか入る事があります。

味わいは酪農工場とフェルミエ製、山小屋で作られるものではかなり異なる場合があり、特に夏の間アルプス山中に放牧される牛のミルクを原料としたものは旨味が強く、また、熟成期間の長いものは更に味わいが濃くなります。
塩味は生地全体によく馴染み、チーズの甘味が強いのでさほど塩辛くは感じられませんが実はしっかり効いています。 酸味は殆ど無く、奥深い甘味が特徴的です。
しかし甘味があっても味わいも香りもしっかりとしている力強いチーズ。
香りは、いかにもフランスグルメ界に浸りきった表現になってしまうのですが・・・ 正に「ノワゼット」、つまりヘーゼルナッツ(はしばみ)のような心地よい香ばしさと、どこかフルーティーな優しく味に期待が高まる香り。
フランス・グルメ界では知らない人は居ないであろう美食家、ブリヤ・サヴァランは「グリュイエール(ここで言うグリュイエールとはチーズの固有名詞ではなく、大型チーズの総称)のプリンス」と称したのだとか。(なお、このサヴァラン氏がチーズに関して残した名(?)文句は数々あります)

味わいが濃いので食後のチーズプレートでは、ブルーチーズよりも後に回した方が良いと思います。 ただしブルーチーズの後に味わう場合は、必ずパンやワインで口直しをしてからにしましょう。 味が混じってしまわないように。
もしくは、クセというよりも特徴的なしっかりした味わいなので、アペリティフにキューブカットや軽くトーストしたカナッペにスライスを乗せるなどしてつまんでもよく合います。 キッシュのようなタルトに加えたり、グラタンに散らしたり、コンテに準じたお料理も可能です。

最も美味しいシーズンは、長い熟成期間と限られた放牧シーズンを考慮すると、冬、春、そして秋でしょう。



TOMATOより:一口にボーフォールと言っても、しかもAOC認定付ボーフォールの中でも、実は色々あります。
お勧めは何と言っても“ボーフォール・ダルパージュ:le Beaufort d'Alpage”、アルプス山脈に放牧されて伸び伸びと草地を動き回って山の草花を食べたボーフォールは、よっぽどのチーズマニアでなくてもその辺の何て事ないボーフォールとはひと味もふた味も違う事が分かる筈。
ところが“アルパージュ(山地で放牧する事)”のミルク使用であっても、放牧時期の極限られた地域を山地とするこのボーフォール、上にも書きましたが、春と夏とでは草も異なれば気候も牛の体のリズムも異なり、味わいはまたそれぞれに違いがあります。 美味しいボーフォールを日本で見付けるのは至難の技でしょうけれど・・・ 輸送技術の発達した今日、いざとなればフランスから取り寄せる事もできるので、是非上質のボーフォールを見付けてみて下さい。
こっくりとした深い味わいは、一口目は甘味が強くてコクのあるふかした山栗のようなこってりとした味わい。 若めのカンタル(Cantal)のような酸味も苦みもなく、コンテ(Comte)のようなコクのある甘味が感じられて、ハードタイプのチーズの奥深さを充分に楽しむ事ができます。 この写真のものの熟成期間を尋ねるのを忘れてしまいましたが、季節から見て6ヶ月程度のものと思われます。
とにかくもうコメントも無くひたすらモグモグ味わうばかり、上質のボーフォールでした。 購入場所はスーパーマーケットのチーズコーナーなんですけどね・・・(19,50Euros/kg)

2002年12月9日







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