マダムTOMATOの“グルメ・ガーデン”
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365のチーズ


Gruyère グリュイエール

    
AOC:1988年12月30日(スイス)
セミハードタイプ、低い円柱型
熟成期間:最低5ヶ月、最大16ヶ月程
重量:約25〜45kg
サイズ:直径55〜65cm、
    高さ9.5〜12cm
主生産地:スイス
     ・グリュイエール地方
     フランス
MG:45%


Vin jaune de Jura、Savoieなどから、熟成の度合いによってチョイス


上の写真は「グリュイエール・スイス(スイス産グリュイエールの意味のフランス語名、Gruyere switzerlandがスイスでの名)」、スイスとフランス両国で作られるチーズで、それぞれの国で同じ名を使用できる僅かなチーズの一つです。
スイスにはチーズと同じ名の地方があり、グリュイエール地方を中心に作られています。 フランス側はスイスとの国境付近にて製造。

山の大型チーズの一種で、1つのグリュイエールを作るのに400リットルのミルクが用いられます。
原料ミルクは、牧草又は干し草を食べる牛の乳、飼料には添加物は加えてはいけないことになっており、搾乳したミルクは新鮮なうちに1日2回製造所へ運ばれ、チーズ製造過程に移ります。
凝乳を型詰めし、加熱・プレスして固めた後、エピセア樅(モミ)の板に並べて熟成させます。 この間、チーズの表面はまんべんなく塩水でこすり洗いされ、熟成に伴い固く、渋いオレンジに色づきます。 この外皮は食べてはいけないことはありませんが、通常は固く、口当たりので外します。
熟成の若いものの明るいクリームイエローの生地はすべらかでツヤがあり、しっとりとしていて軽い弾力があり、ミルクの酸味はさほど強くなく、凝縮された甘味があります。 熟成が進むにつれ生地は締まって薄く切ると少しホロリと割れるほどになり、味わいも更に凝縮され、まんべんなく行き渡った塩味が感じられますが臭みは少なく、奥行きを感じると同時に腰のあるワインが合うようになります。

今日では「グリュイエール」と言えば、スイスかフランスのある種のチーズの固有名詞ですが、この名称の歴史は古く中世に遡ります。 サヴォワからスイスのフリブール辺りで当時、農民の税金代わりにチーズを徴収していた役人がこう呼ばれていたのだとか。
現在の「グリュイエール」は、1951年にスイスとフランス両国が使えるチーズの名として定められました。 そのため、「グリュイエール・スイス」と「グリュイエール・フランセ」のそれぞれの国の2つのグリュイエールが存在します。
しかし、「グリュイエール」の単語は口語として、エメンタルと共に、加熱圧縮タイプのコンパクトな生地のチーズの総称のように使われる場合もありますので混同しないように。

食後のチーズプレートには勿論、スイスやサヴォワなどの山の料理として知られる「チーズフォンデュ」には欠かせず、また、エメンタル同様に細かくすりおろしてグラタンの類(特にオニオングラタンスープ)やタルト(塩味の、キッシュに似た類)などにも幅広く使われています。


TOMATOより:写真のものは熟成1年以上。 生地はよく締まっていて、長い熟成の山の大きなチーズ特有の、まろやかに円熟しまんべんなくこなれた奥深い味わいを堪能できました。 熟成2年のコンテにも負けない美味しさ。 しっかりした味わいのチーズが好きな人は、このくらいのものを一度味わうと、もうスーパーマーケットでパック詰めになっているようなツルンとした生地の若いグリュイエールでは物足りなくなってしまうことでしょう。
物によっては、やや漬物臭さ、特に粕漬けのような香りを持つ場合もあります。 塩水でこすり洗いする外皮から生地に香りが浸透したためなのですが、それはそれでまた異なる美味しさ。 熟成は正しく行われていて、その期間が長い場合に見られるものです。 強めのチーズが好きな方にはお薦め。 こうした類のチーズ通は、特に外皮近くの生地を余さずナイフでこそいで食べ尽くします。
ただ、そくらいの物は、フランス国内でもそうそうどこででも見つかるわけではありません。 度々繰り返していますが、チーズ選びの前にまず、「チーズ屋」を選びましょう。 フランスのチーズ屋にも、万人受けするタイプを揃える傾向や、同じチーズでもより熟成の進んだ物を揃える傾向など、店主や熟成も担当する店舗など、様々ですので、好みの傾向に合ったチーズ販売店を見付けてお馴染みになれば、売り手もプロですから買い手の好みを把握して、良い物が入荷すると真っ先に教えてくれたりしますよ(私の行きつけのお店が正にそうで、とびきりのボーフォール、それも私好みの熟成の長い夏のアルパージュ物が入荷すると、それはもう嬉しそうに知らせてくれます)。
2005年3月4日







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