西洋ニワトコ/エルダー

スイカズラ科:落葉低木
学名:Sambucus nigra
仏名:Sureau/Sureau noir(スュロー・ノワール)
英名:Elder(エルダー)

【概要】
  • 利用部位:主に花、種子を除いた果実(果汁)。 薬用には、第二樹皮、葉、根
     
    ↑ 花
     
    ↑ 小鳥の好物、熟した果実

  • 春、枝の途中と先端に芽を付け、5月頃に一斉にクリーム色の3〜4ミリの小花を直径10〜20センチほどまでの房にして沢山付け、この花は甘いマスカットのような香りを放ちます。(蜜蜂はじめ虫の好物) この時期にはアブラムシ以外の害虫が付くのは希なので、蜜蜂以外の虫の心配は殆ど無く収穫出来ます。
  • 夏の終わりに実は赤く熟し始め、ヨーロッパの物はその後更に色濃く、ツヤのある黒に色づきます。
  • 日本でもヨーロッパ(英仏辺り)でも、雑木林の縁や庭木としてよく見かけます。
    ただ、日本のニワトコとヨーロッパの西洋ニワトコはやや異なり、日本のものは熟した果実は赤、ヨーロッパのものは未熟な果実は赤でも、完熟すると黒くなり、葉も日本の物よりもやや大きく尖っています。
    花はいずれも同様に利用できますが、日本の種の果実を利用できるとは聞いたことがありません。 どちらの実も小鳥達に大人気。 こちらでは熟し始めるとこぞって食べに来て、冬まで残りませんが、日本の小鳥は他に食料があるのか、はたまたもっと賢いのか、冬のはじめ頃まで木に実が残るので、どちらかというと冬の食料としているようでした。
  • 日本では春の枝の途中に伸び始める若芽を山菜として天ぷらにして食用に。 ただしお腹の弱い人は緩下作用があるため、食べると腹が緩くなる事があります。 便秘がちな人には効果があるかも。
  • ヨーロッパでは石器時代から食料として利用しており、ギリシャ・ローマ時代には既に薬用利用されており、人間と関わる歴史の長い植物。 今もフランスやイギリスを中心に薬効が知られ、「これ一本で沢山の薬がまかなえる」と言う人も。 それだけに、昔話や民話にもよく出てきます。

  • 民間利用としては、花と果実(種は除く)の利用のみに留めて下さい。
 
↑ ロワール沿いに生えている1本
 
↑ 4月の新芽

【栽培】
  • 庭木又は雑木林の縁などに生えています。 種や苗木から栽培するのはとてもとても気の長い話なので、まずはご近所を見回してみましょう。 ひょっとしたらお花や実を分けてもらえるかも?
  • この辺り(フランス中部、トゥーレーヌ地方)では、ロワール川、シェール川沿いに沢山自生していて、我が家では春5月頃にスーパーマーケットの空いたビニール袋を10枚程持って採りに出掛けています。
【採集時期と保存】
  • 保存は乾燥、又はジャムやシロップなど砂糖の保存力を借りる必用があります
  • 春(5月頃)、枝先に白い小さな花を沢山まとめて咲かせます。 これを摘み取ってなるべく茎を取り除いて利用します。 花を採り尽くしてしまうと果実を楽しめないので、程々にして必ず花を残してあげるよう配慮しましょう。 自然界の恵みを分けていただく時の最低限のマナーです。
    シロップ作りの際は生のまま、ハーブティーには天日乾燥させます。
  • 果実は“西洋ニワトコ”の黒い小粒のジューシーな実のみを(実りは真夏が終わる頃から)丁寧に集め、シロップ又はフランスでジュレと呼ばれるゆるいジェリーのようなジャムにします。 この際、種は煮た後で構わないので取り除くべきであると言われています。 口当たりが悪いだけでなく、僅かながらに体に良くない成分を含むのだとか。
    甘味と酸味があり、美味しいです。 果実にはヴィタミンCを含みます。

  • フランス、イギリス共に花はのどによいとし、上記のようなシロップや花のドライをお茶にするほか、花のシロップ漬を数日太陽の元に置いて発酵させるとガスを持つようになり、エルダーフラワーのソーダに。
    また、イギリスの家庭料理に花を使ったコーディアルというソースもあるらしいです(詳しい事は分からないのですが、何でも潰して使うのだとか)
    花のジャム、つぼみはピクルスにもできるらしいです。 試したことはありませんが。
  • 更に花はリンゴの保存期間を長くしてくれる作用があるそうで、田舎のほうでは箱に花を敷き詰め、リンゴをならべて更に花で覆いフタをしておくそうです。
  • 果実はお砂糖と共に漬け込んで、ポルトー(ポートワイン)のような甘味あるアルコール飲料にもできます。 日本でも山ブドウで煮たようなものを作る人が居ますよね。
  • 我が家では春、2つの川沿いにビッシリ咲く花を集めてシロップとハーブティー用のドライを毎年作っています(右の、ボウルにあふれかえるのが集めたお花)。
    シロップは水又はガス入りの水(ペリエなどのスパークリングウォーター)割りにしたり、紅茶にたらしたり。 ドライの花はそのままでハーブティーも良いですが、ポットに紅茶の茶葉と一緒に入れてフレーヴァーティーにしても美味しいです。
    甘い香りは、フランスの昔ながらの麦芽糖キャンディーの香り付けにも、果汁と共に使われています。 中国や日本の「南天(なんてん)のど飴」の感覚で、のどに良いとされています。
【効用、その他】
  • 花は風邪、のど、花粉症に良いとされ、お茶、ハチミツ漬け、シロップなどの形で利用されます。
  • 葉は外用薬として、捻挫(ねんざ)や打ち身の患部に揉んで湿布、根は肝臓病の治療薬に利用されるのだとか(民間利用は避けておいたほうが良いです)
  • 漢方でも葉、枝、根を筋肉の痙攣などの治療に用いるそうです。
  • また、葉、果実を元に、それぞれ緑、黒、紫の染め物が可能だとか。

    この木が自生する各国を訪ねて回ると、他にももっと色々な話が聞けそうですね。




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