マダムTOMATOの“グルメ・ガーデン”
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365のチーズ


Gaperon ガプロン(ギャプロン)


AOC:---
軟質熟成白カビタイプ ドーム型
熟成期間:1〜2ヶ月
重量:約350g
サイズ:底辺9cm〜、高さ8.5cm程
主生産地:オーヴェルニュ地方
MG:40%〜

Côte d'Auvergne、Cote du Rhone など赤ワイン


元々、オーヴェルニュ地方の家庭でバターを作った残りのミルクを利用して作っていたチーズ。
バターは、ミルクの乳脂肪分を集めたもので、残ったミルクは全生乳に比べると当然ながら低脂肪。 それのみでは脂肪分に欠けるので通常のミルクを追加して作りますが、それでも出来上がるチーズは全乳を使ったものよりもやや低脂肪となるわけです。 その点ではトム・ドゥ・サヴォワと同様。
ただ、今日では味わいのために昔よりも追加する全生乳の量が増えている又は最初から通常のミルクを使用して作られる場合もあるらしく、完成品の乳脂肪分は作り手によってやや幅があり、全生乳製カマンベールと同じ45%近くになるものもあります。
原材料は牛乳、厳密には生全乳、殺菌乳又は脱脂乳に全乳(生又は殺菌)を混ぜたもの。

ドーム型のこのチーズには、写真の通り紐がかけられています。
これはかつての名残。 というのも、形作ったチーズはかつて、お家のキッチンのかまどの近くにつる下げて熟成させていたのです。 そのため、ゆっくりと熟成しながら同時に薫製風味が加わります。
味わいも特徴的で、ガーリックと粗挽き又は砕いた黒コショウが生地に混ぜ込まれており、その風味が強く感じられます。

製造過程で加熱はされませんが、生地は型詰め後プレス(圧縮)されます。
表皮はコウを吹いたような天然の薄い白カビに覆われ乾いており、指先で押すと軽い弾力があります。
生地はアイヴォリー色でしっかりと締まっていますがしっとり(写真の物は熟成中期)していて、熟成中期の山羊乳チーズ、クロタンに似た質感。 熟成が若いうちはしっとりめ、熟成が進むと水分も徐々に飛んで行き、味わいにもやや刺すような辛味が感じられるようになります。

産地ではその昔、各家庭で自家製バターを作っており、それに伴ってこのチーズを作っていた というのは上記の通り。
そして一家の娘がお嫁に行く時にそのチーズをたっぷり持たせる習慣があったそうです。
その際のチーズの量が多ければ多いほどバターの生産量も多いと判断されるため、その家庭のお金持ち度が示せたのだとか。

また、「Gaperon:ガプロン(又はギャプロンとも)」の名の由来は「gaspe(ガスプ)」、「gape(ガプ)」又は「gap(ガプ)」から。 いずれも、バターを作った残りのミルクの事を土地の方言でこう読んでいたためで、それが派生してガプロンとなりました。 一般的フランス語ではそうしたミルクの事を「babeurre:バブール」と呼びます。
全く関係が無いのですが、聞くところによると「Nichon de belle-mere」、“義母のおっぱい”なる別名があるのだとか・・・(!?)

上記写真の他に、下のようなタイプもあります(写真は半分にカットしたもの)。

こちらはページ上の写真のものとは少し違いよりフレッシュな状態、製造から1週間程度でしょうか。
凝乳にガーリックとコショウ、塩を加えて布巾に包んで水切りして形成したもので、丸くまとめて布巾の端をまとめて絞った上の部分にシワが寄っています。
こちらの生地は大分しっとりとしていてシェーヴル(山羊)のフレッシュタイプのようにキメ細かな生地はサッパリとした味わい。 同じガプロンでもまたひと味違った風味を楽しめます。

余談:産地はオーヴェルニュ地方の中でもLimagneリマーニュ平野、厳密にはピュイ・ドゥ・ドーム(Puy-de-Dome)圏のBaillim(バイヨン)と呼ばれる地域で、ここはいくつかの農業特産物が知られるオーヴェルニュ地方で最もニンニクの美味しさで知られている所なのだそうです。 そのニンニクは外皮がピンク又は紫がかかっており、味わいに加えて保存期間の長さ(1年ほど迄、ただし茎が付いていること)でも認められています。 こうした特徴から、チーズ自体ではなくそのニンニクに「Ail d'Auvergne:アイユ・ドーヴェルニュ」の名でAOC認定申請が行われている最中なのだとか。
なお、同ピュイ・ドゥ・ドームは1960年頃、フランストップのニンニク生産量を誇ったのだそうです。


TOMATOより:滅多に買わないチーズなのですが、私はいつも一口目、サラミのような薫製のソーセージを連想します。 今日のガプロンには薫製風味は無いので、ガーリックと粗挽き黒コショウの風味がソーセージのそれにそっくりだからなのでしょう。
おつまみチーズ、特にアペリティフのお供に向きます。
2003年1月3日+2003年7月30日追記







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