マダムTOMATOの“グルメ・ガーデン”
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365のチーズ


Livarot リヴァロ

  
AOC:1975年12月17日
軟質ウォッシュタイプ、低い円柱型
熟成期間:60日〜3ヶ月
重量:約450g
サイズ:直径約12cm、高さ約4.5〜5cm
生産地:ノルマンディー地方
MG:40%


赤ならボディがしっかりしたもの、でもタンニンが強すぎないタイプ。
白はどちらかというと甘口。 或いは同じノルマンディー地方のカルヴァドス

濃い麦わら色からよりオレンジに近い湿り気のある外皮に、側面に巻かれた数本のイグサが特徴。
ノルマンディー地方、厳密にはポン・レヴェックと同じバッス・ノルマンディー圏(Basse-Normandie)産、カルヴァドス及びオーヌ県内の限られた地域で作られ、ノルマンディーで最も古いチーズの一つと言われ、17世紀末にここからパリにも仕出していたチーズが、恐らくリヴァロの原型であろうと言われています(ポン・レヴェックの先祖説もアリ)。
19世紀末には、同地方で最も消費されていたという人気のチーズでしたが、当時の代名詞は「貧乏人の肉」。 現在日本で幾らで販売されているかを当時の人が知ったら、耳を疑うことでしょう・・・
ところが当時は低脂肪チーズで、脂肪分が低いために色合い初め見映えが悪く、やや大きめで丈の高いこのチーズの側面が熟成と共にたるんでしまわぬようにという目的と共に、見映えをカムフラージュする目的もあって、側面に藺草(イグサ)が巻かれたのだとか。 現在もリヴァロの特徴の一つとして、形だけながらもこのイグサは残されており、側面に巻かれた帯を「陸軍大佐」の階級を示すバッヂの5本線に見立ててニックネームは“コロネル:Colonel”とのこと。 ・・・とあちこちで語られているのですが、このような名前で呼ぶ人には出会ったことがありません。
また、安価に仕上げようという目的なのか、中にはこのイグサを紙で模倣した帯に置き換えてしまったチーズもあって、「リヴァロ」と名乗るチーズにも要注意。

<製法>
原料は牛生乳、或いは殺菌乳。 勿論生乳製の方が味わいが良いです。
ミルクに乳酸酵素を加えて凝固させ、凝乳を2度細かく切り刻みます。 これを水切り(乳精、ホエーを除く)、型詰めして形成し更に水気を切ります。 この時点でのチーズはまだ真っ白、そのままでは乳酸による酸味があり、完成からはほど遠い味わい。
型から出したら、暖かい部屋で24時間生地を休ませます。 この間に、チーズに必要なカビの元が表面に付着、後の熟成期間にこれが威力を発揮します。
続いて表面の水分を拭い、細粒塩をまぶすか塩水に浸して添塩した後、生地から出る水分をしばし乾燥させてから熟成に移ります。
オレンジ色の外皮は、植物性色素“ロクー(ロクーの木と呼ばれる南国の木から採れる赤オレンジの色素)”で着色されるもので、およそ40日間の最初の熟成期間に、定期的に週に2〜3回、この色素を含む液でこすり洗いしブラシをかけると共に上下もひっくり返してまんべんなく熟成。
リヴァロの最大の特徴であるイグサはこの後、グルグルと5集巻き付けられ、ここから更に次の熟成が始まります。

いわゆる「チーズの臭み」を持つのは外皮部分。 生地には小さな穴が見られることがあります。
暖かい部屋に裸で放置しておくとかなり強い香りを漂わせますが、味わってみるとその“臭み”はさほどのものでもありません。 口に含むと、とてもなめらかな生地ですが、完熟のカマンベールやブリヤ・サヴァランのようなクリーミーさではなく、とろけるようでとろけない、極々僅かにもっちり感のあるすべらかさを感じます。
サイズの割には熟成が長いだけあって、生地はよく馴染み、塩味は強すぎず弱すぎず、でもしっかりとまんべんなく均一な味わいで、脂質のしつこさは殆ど感じません。

<食べ方>
普通、このチーズは外皮を外さずに、側面のイグサだけを取り除いて味わいます。 ただ、最も臭みが強いのが外皮なので、苦手な人は皮だけ外してしまっても構いません。
カット方法は(別にページを用意していますが)、丸ごとなら丸いケーキを切るように、半分でも同様、中心から放射線状にナイフを入れて行きます。

<選び方:参考までに>
作り手によって仕上がりの色合いが少しづつ異なるため、色による熟成具合の判断はできません。
外皮の湿り気も個々に違いがあるので、必ずしも美味しさの目安にはなりませんが、チーズ独特の臭みだけでなくアンモニア臭が鼻を突くような場合は、熟成が上手くいっていないので避けましょう。 「チーズの臭み」は必ずしもアンモニア臭に繋がっているわけではありません。
表面が乾いたものが良いという説もありますが、味わってみると必ずしもそうでもない印象です。
また、熟成頂点に達していても、形をとどめているものを選びます。

<その他のリヴァロ>
リヴァロには、最も一般的な上記サイズの他にも3つ、重量350〜500gの異なるサイズが存在します。
・「le trois-quart de Livarot」:直径10.6cm
・「le petit Livarot」:直径9cm
・「le quart de Livarot」直径7cm


TOMATOより:一年中楽しめる牛乳チーズ、しかも大物チーズをいくつも生み出すノルマンディー地方の格も手伝ってか、フランスのチーズショップやスーパーマーケットのチーズコーナーでもお馴染みの顔ぶれの一員。
ところが、それだけ沢山あるということは色々な作り手・熟成職人も居るということで、おのずとその仕上がりもピンからキリまでです。
妙に外皮ばかりがジメジメしていて、切り口は固かったり中途半端にとろけているのに中心に極端に固い芯が残っていたり。
一口に「リヴァロ」といっても、ハズレは大ハズレなことも多いので、信頼できるお店で頼りになる売り手さんを見付けるべきチーズの一つだと思います(工場生産物でない限りは全てに言える事ですけれど)。
近頃私はハードタイプ好みなので、久しぶりに相棒のおねだりを聞き入れて買ってきたのが写真のもの。 しばらく行けなかったマルシェの馴染みのチーズ屋さんで「丁度食べ頃」のお墨付きを頂いただけあって、生地は軽い弾力を残しつつもまろやか、チーズ独特の強い香りはあっても皮に妙な臭みもなく、上出来の一品でした。



2004年4月3日







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