マダムTOMATOの“グルメ・ガーデン”
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365のチーズ


Stilton スティルトン

    
AOC:下記参照
青かびタイプ、円柱型
熟成期間:3〜6ヶ月
重量:約7〜8kg
サイズ:直径約20cm、高さ25〜30cm
主生産地:下記参照
MG:50%前後


しっかりした味わいの赤ワイン、
10年物のポルトー(ポートワイン)etc.

イギリス及びイギリスの青かびチーズの代表格で、世界三大青かびチーズにも数え上げられる、牛殺菌乳製チーズ。
イギリスのチーズとしては唯一、ヨーロッパのAOCを取得しています。 ただしこのAOCは、青かび入りのスティルトン、Derbyshireダービシャイアー、Leicestershireレスターシャイアー、Nottinghamshireノッティングハムシャイアーにて伝統的な製法を守って作られたものに限られます。
「スティルトン」には、青カビを植え付けていないものもあり、そちらは「White Stilton:ホワイト・スティルトン」と呼ばれます。
スティルトンを名乗れるチーズには下記の条件があるそうです。
・上記3つの地方にて搾乳されるミルクの殺菌乳を原料に同地方で製造される
・伝統的なシリンダー型が使われる
・製造過程でプレスせず、天然の外皮を持つ
・生地には中心から放射線状に青かびが広がる
・スティルトン独自の味わいを持つ

英国には、ロンドンから130km程離れた所にスティルトンというチーズと同じ名の村がありますが、そこで製造されているわけではありません。 名の由来は、遡る事18世紀。 ロンドンとヨークの2つ街の間にあるスティルトンで食事を取る旅人が多数居ました。 そこにあった「Bell Inn」というお宿で、柔らかくクリーミーな青カビチーズをサーヴし人気を博した事から、その街の名がチーズの名として定着してしまったのだとか。 もっとも、これは一説に過ぎず、類似した、でも微妙に異なる説がいくつも存在するようで、おおよそそんなところではあるものの厳密な所は明確には分かっていないようです。

製法は、搾乳した牛乳を殺菌処理、次いで凝乳酵素とペニシリウム・ロクフォルティと呼ばれる青かびの種菌を加えます。
凝乳の水分(ホエー)を除くためにまず1晩乾燥、翌日これを刻んで更に水分を除き添塩、次いで型詰めします。 1つの型にはおよそ11キロの凝固乳が必要。 ある種のセミハードやハードタイプのようなプレスはせず、5〜6日間混ぜて水切りを続けます。
それから更に5〜6日後、形成されたチーズを型から取り出して包み、熟成開始。 熟成期間中には定期的に上下をひっくり返し、6週間もすると外皮が出来ます。そこで登場するのが大きな針。 外側からチーズに幾度も突き刺し、青かびの繁殖を促します。
11キロの凝乳から成る若いスティルトンは、それから3週間(熟成開始から9週間)程後には水分を失って8キロ程になります。 この時点で仏語で“Carottage:キャロッタージュ”と呼ばれる、出来具合のチェックが行われます。 これは筒状の専用の道具を刺して生地を取り出してその出来を確認するもの。 このコントロールに合格したもののみが“スティルトン”として出荷されます。

チーズ屋で販売される完成されたスティルトンの生地は、自然脱水のため生地はややもろく、青カビがまんべんなく中心から外皮に向かって広がります。 フルム・ダンベールのようなテラテラと光ることのないマットな質感の生地はよく締まり、それでも切ると生地はデリケート、小分けにした1ピースにナイフを入れると、ホロリと生地が崩れることもあります。 このため丸ごとのスティルトンを輪切りにする際は、針金の両端に持ち手が付いた、主にブルーチーズ一般のカットに使われる特殊な道具を用います。
凝縮されたミルクの味わいと、刺激は強くないもののしっかりした青カビの風味、メリハリが効いた風味ながらも全体によく馴染んだ落ち着いた深い味わいがあり、青カビの王者3つに挙げられるのも納得。
熟成が進むにつれ、外皮の色は次第に濃いオレンジ茶に色づいて厚みを増し、そこから内側に向けて生地は黄色味を帯びてきます。


TOMATOより:久しぶりに買ったスティルトン、200g程の塊は、焼きたてのパン・ドゥ・カンパーニュと共にあっという間に消えてしまいました。
クリーミーなゴルゴンゾーラ、羊乳のコク深いロックフォールと共に、完成度の高いスティルトンは、元来青かび好きな私には大好物です。

2004年1月17日


ニンジンの色素で着色したスティルトン。 味わいには、さほど変化はありません。 パリ・バスティーユのマルシェにて購入。





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